クラウドソーシングの法律問題(2) ―請負? 売買?
Aさんは、クラウドソーシングを利用して、Bさんに、自分の名刺を100枚発注しました。出来上がったものが送られてきて、Aさんが確認したところ、名刺の裏面に印刷されていた地図のAさん宅の場所がずれていました。Aさんは、Bさんにやり直しを依頼したところ、Bさんは不可抗力だから直す義務はないと言ってきました。
このAさんとBさんとの契約は、名刺を作ってもらうという請負契約でしょうか、それとも名刺を売ってもらうという売買契約でしょうか。今日のお話はここが問題となります。
民法では、請負とされるか、売買とされるかによって、効果が変わるものがあります。
その1つが、瑕疵修補請求権(かししゅうほせいきゅうけん)というものです。
これは、 渡された物に瑕疵(欠陥)があったときに、それを直してくれといえる権利です。
当然認められるでしょ、と思われるかもしれませんが、そうではありません。
民法上、請負契約では瑕疵修補請求権が認められていますが、売買契約では瑕疵修補請求権が認められていないのです(※)。
売買契約だとされたら、後は解除するか損害賠償を請求するしかありません。
では、請負契約か売買契約かはどのようにして決まるのでしょうか。
これまでの裁判例をみてみると、次のような要素で判断されるようです。
①材料を誰が用意したのか
→注文した人が用意したとなると、請負契約と判断されやすくなります。
②作られた物に独自性があるか(他でも容易に調達できるものか)
→他では調達できないとなると、請負契約と判断されやすくなります。
これは、完成物を「渡す」こと(売買)か、そもそもある特定の物を「作り出す」こと(請負)か、どちらが契約上重要だったのかを見極めようという観点だと思われます。
この観点からすると、先の事例では、①材料となる紙はBさんが用意したのでしょうが、②Aさんの名刺はそこらで売っていて調達できるということはないでしょうから(イチから作らないといけない)、独自性があるといえ、ある特定の物を作り出すことが契約上重要であったといえます。
したがって、AさんとBさんの契約は請負と判断され、Bさんは名刺の作り直しをしなければならない可能性が高いと思われます。
ともあれ、これは一般的な話にとどまりますので、個別のケースでは、他の理由によってBさんが直さなくてもよいという判断になることもあります。
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(※)特約で瑕疵修補請求権を認めていれば、もちろん別問題です。