あしたば法律日記

船橋の ”あしたば法律事務所” の弁護士が、皆さんに身近な法律をテーマに語ります

司法試験の合格発表と今後に向けて(長いです!)

昨日(9月9日)、平成26年度の司法試験の合格発表がありました。

私の母校の千葉大学ロースクールは、合格率で全国9位(受験者84人中26人合格:合格率30.95%)で、例年の成績とそれほど変わっていないと思いますが、問題なのは、私が修了した未修コースの合格率がたった4%(25人中1人)にとどまったことです。

もはやロースクールを離れて久しい、ほぼ部外者の身ですから、原因をあれこれ推測するのは控えます。

もちろん、千葉大学は大規模校ではありませんから、サンプル数が少なく、極端な結果が出やすい(昨年の未修コース出身者の合格率が全国トップだったのも同じ理由と思われます)のもよく分かるのですが、それにしても、残念な結果でした。

今回、期待した結果が出なかった方で、来年も受験される方は、今年、なぜ自分の成績が振るわなかったのかを考え、これからの勉強に活かしてください。

 

択一で振り落された方は、まずは知識が足りていないことが原因と思われます。これまで使っていた基本書を、条文を引きながらもう一度読み返してみたらいかがでしょうか。もうわからないところを飛ばして先に読み進める段階ではないので、わからないところは恥をしのんで、周りの友人や先生に聞きましょう。その後は、択一の過去問を、ほぼ100%正解できるまで繰り返し解きましょう。予備校の模試は過去問を解きつくした後でも大丈夫です。なお、問題が時間切れで解けなかったという方も、おそらくは知識不足で、すぐ切れる肢を切れなかったことが原因と思われます。

 

論文で涙を飲んだ方は、自分の答案作成能力に何が不足しているのか考えるべきです。

まず、何を聞かれているのか分からなかったというのであれば、知識不足の可能性が高いですから、やはり基本書や判例百選を読み直してみましょう。判例百選の事案部分も読めば、テーマとなっている論点がどのような事案の処理に必要になるのかが分かってくると思います。

また、問題を読み違えたというのであれば、問題に対して素直に解答するとどのような形になるかを、過去問を使って練習しましょう(優秀答案を読んでもいいので)。旧試験と異なり、回答の仕方にはバリエーションがあるはずです(特に民事系と行政法)。司法試験の論文の答案は、こうでなければならない、というような思い込みは捨てましょう。

次に、時間配分を間違えたというのであれば、書く内容が決まって後は書くだけという状態から、自分が最低4枚の答案を書くのに何分かかるかを測りましょう。どんなに遅くとも、そのくらいの時間プラス10分程度の時間を残して、答案を書きはじめる必要があります。相当はしょっても必要なこと(結論と理由)を漏らさずに4枚書ければ、合格はできるはずです(私は刑訴法3枚でも大丈夫でしたので)。

最後に、論理力や表現力については、自分では足らないのが分かりにくいと思います。過去問を使い、実際に時間を測って解答を作成してみて、友人に見てもらいましょう。論理が飛んでいたり、論旨不明で伝わらなかったり、結論が独りよがりになっていたり、というところは遠慮なく教えてほしい、とお願いし、謙虚に聞きましょう。そのような指摘を受けた方は、私の1個前の投稿がお役に立てるかもしれません。

 

苦しんでも5月には区切りが来ます。無期懲役どころか、懲役1年よりも軽いです。その間、勉強のベクトルを間違えずに一生懸命やれば、成績を伸ばすことは可能です。

1年後、皆さんが雪辱を果たせるようお祈り申し上げます。

「あてはめ」って何だ!? ~司法試験受験生のために

先日、母校の学生さんたちと話す機会があったのですが、そのときに話し忘れていたことがあったので、ちょっといつもと趣向を変えて、試験勉強向けの記事を書きます。

 

今日は、「あてはめ」は大事だよ、という話です。

論文試験の答案では、事実に即して問題提起をして、その問題を判断する基準(規範)を定立して、事実を先の基準にあてはめて、結論を導きます。

その「あてはめ」については、

・問題文から事実を抜き出してくる

・有用な事実をたくさん拾う

といったことは、ある程度、共通理解ができていると思います。

でも、いまひとつ、という受験生によく見られることで、上記の点より指摘されないことがあります。

それは、「拾った事実を評価する」という視点です。

 

たとえば、刑訴の問題で、任意捜査の限界が問われたとしたら、

「必要性、緊急性を考慮したうえで、具体的状況のもとで相当と認められる程度の有形力の行使」かどうかという基準につき、事実をあてはめることになります(最判昭和51年3月16日参照)。

ここで、「司法警察職員Aが甲を職質中に、甲のカバンが開いていて、ノコギリみたいな刃が顔をのぞかせていて、Aが甲を現認したのがアイドルグループの握手会会場付近で、しかも甲が『急いでるんで』といって会場に入って行こうとした際に、Aが『待って』と甲の左肩をつかんだ」という事実があるとしましょう。

このときに、問題文から事実を抜き出すことだけ考えていると、「ノコギリみたいな刃が顔をのぞかせていて、司法警察職員が甲を現認したのがアイドルグループの握手会会場付近で、しかも甲が『急いでるんで』といって会場に入って行こうとした」ため、「必要性、緊急性が認められる。」とか書いてしまう人がいます(そんなバカな!という人もいるかもしれませんが、試験になるとついやっちゃってる、という人が結構います)。

でもこれだと、採点官に伝わりません。

当該事実が「必要性」や「緊急性」の有無にどう影響するのか、という評価が必要なんです(前掲の最判がそれをやっていないんですが・・・)。

食材(事実)を下ごしらえ(評価)しないで、煮るだけ煮て(あてはめ)、はいどーぞ!だと岸朝子先生や土井善晴先生に怒られるのと一緒です。

例えば、「握手会会場付近で、そこでの用途が全くないと思われるノコギリ様の物を見つければ、他害目的であることが推認されるので、その場に留め置いて話を聞く必要性が高い」とか、

「ここで甲を解放すると、すぐにでも甲が握手会会場に入ってしまうおそれがあり、そうすれば人ごみの中で甲を確認することが難しくなり、具体的な危険が生じた段階で甲を止めることができなくなるので、緊急性が高い」とか、

ここまでくどく書くかは別として、「拾った事実を評価する」というのは、このように事実とあてはめの橋渡しをする、ということなのです。

これがなかったり、足りなかったりすると、論理が飛躍していると思われてしまい、点数が入らないおそれがあります。

評価の部分は、自分で表現を考えなくてはならないので、時間を取られると思いますが、その分努力が伝わるところだと思いますので、気をつけておいてほしいです。

 

それでは、試験大変ですが、頑張ってくださいね!

クラウドソーシングの法律問題(3) 身を守るために

去る4月21日のことですが、毎日新聞の朝刊に、私が取材を受け、コメントをした、クラウドソーシングについての記事が掲載されました。

ブログを更新する余裕がなくて、事後報告になってしまいました。

申し訳ありませんが、毎日新聞を購読していない方は、図書館でご一読ください。

 

記事の概要としては、クラウドソーシングが新しい働き方を提案しているとする一方で、買いたたきなどのトラブルが生じている、というものです。

 

クラウドソーシングで仕事を受注する、いわゆる「クラウドワーカー」は、労働者が労働法で守られるのと異なり、クラウドワーカーの立場が弱いからといって法律が特別にワーカーを守ってくれるということはありません。

これまでにある法律を駆使して、自分の身を守らなくてはいけないのです。

 

例えば、相手とはきちんと契約書を交わして、どうすれば仕事が完成したといえるのか、報酬の支払時期はいつか、納期が遅れたらどうするか、などトラブルが起きないようにしなければなりません。

また、民法や商法、下請法によって、どのような場合に自分が何を主張できるのかもある程度考えておいた方がよいでしょう。

 

もちろん、全て自分でイチから勉強するというのは大変ですから、弁護士などの専門家を頼るのも有効な手です。

弁護士なら、契約書のチェックから、トラブルになった際の対処法まで、アドバイスができます。

 

自分も事業主なのだという自覚をもって、クラウドソーシングをうまく利用してください。

 

 

 

クラウドソーシングでお困りの方は、当事務所までご連絡ください。

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